株式会社LPU

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株式会社FIRST LIFE 代表取締役 高橋 一生様

コロナ禍に見舞われ、飲食店での売り上げを大きく落とした事がきっかけで、同じくコロナの影響を受けた他の業界の仲間と一緒に「株式会社FIRST LIFE」を立ち上げた高橋様。
この時の会社の事業が、現在の軽貨物事業につながっているのだそうです。
会社従業員や事業のお客様だけでなく、雇用の創出など社会事業的な観点を持って事業を展開されています。

今回は、オンラインでのインタビューにお応えいただきました。

前身である株式会社ファーストライフを、2019年9月に飲食業1店舗の小さな会社として創業しました。とても好調でしたが、コロナ禍による観光客の減少や外出自粛による影響を大きく受けて、売り上げが95%もダウンしてしまいました。飲食業界の苦境と同じくタクシー事業者も影響を受けていたことから、どちらの業界も救済する事業として、「食べタク」というデリバリーサービスを仲間とボランティアで開始しました。今の会社を食べタクを運営する会社として2019年12月に立ち上げました。これが軽貨物事業へと転身していった礎となりました。

現在では全国15都市に事業展開をしており、配送業の他、障害福祉事業、リサイクル事業、通信コンサル事業、中古車販売事業、レンタカー事業、有料人材紹介事業(2024年開始)を手掛けています。
(現在自車保有車両160台、自社直契約ドライバーは230名)

ラストワンマイル市場(※1)は10年で2.2倍に成長しました。今後も人口減少は進むものの、買い物に行く時間を有効に活用する「時間価値の向上」を求める人々から多くの需要が見込まれます。我々、働き世代が現在ニュースにもなっている「買い物難民」世代の年齢に追いつくころには、スマーフォンの利用に慣れているため、買い物や日常生活で必要なサービスは全て「配達」で賄うことが想像できます。物量(重量)は下がるものの個数は増加の一途をたどると思っております。

現在は「売れた」から「運び」ますが、今後は2024年問題、高齢化社会、人出不足の観点から「運べる」から「売れる」時代へと変革していきます。我々も前述にあげた社会問題には直面しますが、配送AIを使ったフィジカルインターネット(※2)の構築で配送を効率化し、複数荷主の荷物を同時に運ぶ「共同配送」を構築し、現在も少しづつこの領域を育てています。実際に本社のある札幌での実証実験では荷主企業3社の共同配送により、人員(車両も)は3名から1名に、そしてコストは35.5%削減、ドライバー報酬も50%アップという結果を出しており、現在も継続しています。

続いてドライバーですが、配送ドライバー全体の社会的地位が低いことが問題だと思っています。賃金、労働時間の諸問題は勿論ですが、荷主企業が人材不足で配送が止まることが売り上げに直結することをもっと深く理解し、ドライバーに対する正当な扱いについても追及したいと思っています。

一方で、ドライバーの多くは過去の「信用情報」が悪い方が多く、借金や自己破産経験者などといった方々が多く存在します。この方々に向けて、三井住友海上、インパクトサークルと業務提携し、過去の信用情報ではなくそのドライバーのやる気や人柄から未来の信用度を評価基準とした配達車両の「インパクトリーシング」をスタートしています。これは金融審査に不通過で車両が手に入らず事業が拡大できない個人や法人に向けて仕事も紹介し安定的にリース債務を完済することで、個人の信用情報を回復させることと、車両が得られたことで収入が上がるといった社会インパクトを創出する事業です。

今後も我々は『Regional Solution』を掲げ、「運ぶ」ちからで『地域課題解決』の一助となるよう努めて参ります。

  • (※1)物流の最終拠点から企業や個人宅へ配送すること。宅配便など。
  • (※2)複数の企業が保有する倉庫やトラックをシェアリングして物資を効率的に輸送する、新しい物流システムの構想のこと。

従業員と契約スタッフには常に「幸せ」を提供したいと思っています。
目指す目標は高く、常に少しだけ背伸びをしよう!と声をかけ、「現状維持は退化である」ということを言い続けています。人の成長は死ぬまで続けられると考えており、常に新しいことに挑戦し続けるという姿勢を私自身が体現し、発信する場を設けて、全国に点在するドライバーと定期的にセミナーやディスカッションする場を設けています。

パートナー企業へは仕事は「もらう」ではなく常に「創る」ことを目指して、日々配送業務に追われている代表さんを定期的に集めて意見交換の場を設けたり、我々の事業の管理を任せたりしています。

先ほども言いましたが、個人の時間価値の向上というものは働き方にも適応されると思っています。本業の仕事が終わった後、副業として自由な時に好きなだけ配達ができることを達成したいと思っています。コロナ期間に大きく成長したフードデリバリーがこの働き方を実現したため、大きく全国区へと拡大したものと思います。どんな人でも好きな時に好きなだけというモデルが確立できれば、人出不足が心配される配送業の課題解決になると思っております

普通軽自動車が5ナンバーのまま事業用の黒ナンバーを取得できるように法律改定されたため、詰める荷物の個数は少なくても多くの方が参入できる体制になったと言えますが、システムが追い付いていないことと荷主側での認識がまだ薄いことが問題点と考えます。

ガソリン代、車両整備などの経費を背負うドライバーの報酬は、走行距離にもよりますが最低でも時給2,000円程度であるべきと考えますし、件建てや個建て(※)の場合は物流波動があるためドライバーの収入は不安定なものとなります。今は1社の荷物を専属的に配達しているので荷主はドライバーの生活を保障する責務があると思っていますし、そうしないのであれば共同配送を行うことでドライバー収入を確保してあげる必要があると考えます。

  • (※3)配送料を決定する単位。車建て、件建て、個建てなどがある。

軽自動車の黒ナンバーが容易に取得できるようになったとを話しましたが、これを利用して主婦層やWワークの方を多く取り込みたいです。年齢性別を問わず車があれば仕事ができる環境を与えることができれば、生活保護などの社会保障費削減の一助となるほか、精神的な問題で障害者認定を受け、生活保護になっている方へも雇用の創出が可能であると思いますし、現に上記にあげたようなドライバーの雇用も進めており、最近では就労支援施設と協力し、障害年金を受領しながら統合失調症から回復を目指すドライバーをフルタイム稼働させることに成功しております。

業務委託契約については多重下請け構造の廃止が必要です。車両を持たず、人も集めず管理もしないで元請けとなり、手数料を抜いて仕事を渡す「中抜き企業」を排除しない限りドライバーの幸せは達成できないません。現状のままでは配送業の未来は変えることができませんので、ここに向けた法改正は必要不可欠です。

また、働く若者に対しては、事業主と正規雇用の税制の違いをはっきりと理解させる事が重要です。例えば、セミナーを開催して、今後期待できないと言われている社会保険制度よりも、しっかりと手残りを残して、自分の責任でNISAやiDeCoのような投資を自身の未来のためにしていく事の大切さを伝えています。